以下の作品は三島由紀夫文学館で新たに発見され、「決定版三島由紀夫全集」に収録されたものです。
青垣山の物語|雨季|鵲|神の灣|水鶏の里と四気|仔熊の話|子供の決闘|白拍子|春光|神官|環|耀子
でんしゃ|縄手事件|檜扇|舞踏病|冬山|坊城伯の夜宴|真白な椅子|ミラノ或ひはルツェルンの物語|領主|我はいは蟻である
小説(原稿欠損)
執筆年月日/1942年(昭和17)4月25日
収録/『決定版三島由紀夫全集15』
あらすじ/倭健命(やまとたけるのみこと)が数々の危難を乗り越え、帰郷途中で薨去(こうきょ)する物語。弟橘媛(おとたちばなひめ)の入水によって難をのがれた走水(はしりみず)の海や玉倉部の清水にたどりつく前に巨大な白い猪と遭遇したこと。死期が迫るにつれ、尊の言葉が詩となって兵士の心を打つ。尊の御陵から白鳥が飛び立ち、人々は涙ながらにその後を追う。
小説
執筆年月日/1940年(昭和15)
収録/『決定版三島由紀夫全集20』
あらすじ/扇山家は藤原の流れをくむ名門であったが、代々本家の兄弟は宿命的に争ってきた。金持ちで実業家の守愛(もりちか)は妻と娘を伴って、満州行きを決意する。一人息子の陸太郎は兄の守雅(もりまさ)にあずけられる。19歳の陸太郎は憂鬱な青年だった。守雅が友人の車で帰宅途中、分譲地の崖の上に立っている陸太郎を発見する。彼は退屈で陰惨な青春時代を陸太郎に重ねるのだった。守雅は陸太郎を陽気にするために園遊会を企画する。陸太郎は伯父の家の生活が自分を破壊していることに気付く。
小説
執筆年月日/1939年(昭和14)
収録/『決定版三島由紀夫全集15』
あらすじ/百済を討つために、新羅の名高い武将・金(きん)が5万の大群を率いて、陣営を張った。そこに鵲が現れたが、正体は百済の王女桂仙が敵陣偵察のために変身した姿だった。王女は幼時から剣術、神術を修め、自勇兵器を造り、百済の強敵を打ち破ってきた。金は王女に向かって、自勇兵器に勝つ自信をのぞかせ、軍備陣営を隅々まで見せた。敗北を知った王女は再び鵲の姿になり、百済へ戻る途中、力尽きた。
小説(原稿中断)
執筆年月日/1944年(昭和19)
原稿枚数/200字詰原稿用紙7枚(タイトル1枚を含む)。以下、中断
収録/『決定版三島由紀夫全集20』
あらすじ/美しい男神が天上の一領国を統治していた。彼の国には古くから物静かな神々や彼らの子孫が住んでいた。神の国に飽きていた彼は入江を歩きながら、昔の神々のように笑いたいと思った。昔、神々には「夢想」も「訪れ」もなかったが、この両方を体験することができたのは男神だけだった。
小説
執筆年月日/不明
収録/『決定版三島由紀夫全集補巻』
あらすじ/「春」春の到来を賞美する動植物たちの話。「夏」海水浴に来る人間をもてなす海や危うく怒れる海の犠牲になるところだった海鳥の話。「秋」三人兄弟のこおろぎの話。なかでも一番下の弟が怪我で滅入っている娘に歌を披露し、翌日、娘の怪我が治ったという話。「冬」編物をしている老婆の肩にジョウビタキが止まり、今夜はクリスマス・イブだと教える。そしてリスやタヒバリが食べ物を運んできたり、ノビタキが部屋の掃除をする話。
小説
執筆年月日/1940年(昭和15)6月14日
収録/『決定版三島由紀夫全集15』
あらすじ/父が大阪に転勤になったのをきっかけに明雄はたびたび関西旅行をするようになった。ある夏の日、父は仔熊を見せるために、明雄を役所に連れて行った。檻のなかに入れられた仔熊は人間のようにあぐらをかいていた。小使いさんが昼食を仔熊に与えたあと、檻から出し、お手や梯子のぼりをさせる。父が大阪から帰ってきて、仔熊を高等学校時代の友人の室垣に払い下げてしまったと言う。室垣は温泉を経営している。十二月半ばに父と室垣と明雄はその温泉に行き、トミィと名付けられた仔熊と再会する。
小説(原稿中断)
執筆年月日/不明
収録/『決定版三島由紀夫全集20』
あらすじ/平和主義の都築夫妻は自分の息子の将来に、宝くじの当たりくじのようなみみっちい夢を見がちであった。悲観的な父親が思うにはいつ体制がひっくり返るかわからない社会の子供たちの未来は荒涼としている。夫妻の息子・信夫は新制中学の三年生で、勉強、スポーツがよくできたが、冒険小説の影響で笑顔を見せなくなった。
小説(原稿欠損)
執筆年月日/1944年(昭和19)
収録/『決定版三島由紀夫全集20』
あらすじ/子供を亡くして、奇妙な体験を重ねた主人公(私)は突然、舞の才をさずかる。それ以来、数奇な人生を送ることになった女の物語。
小説
執筆年月日/1938年(昭和13)
収録/『決定版三島由紀夫全集15』
あらすじ/病気の祖母の部屋には送られてきた植木が飾ってあった。祖父は春の暖かい午後だというのにこたつに入っている。祖父とわたしは庭へ下りようとして、祖母の居間の障子を開け放った。庭に山椿が咲いていたので、小枝を折って、祖母に渡した。椿に顔を近付けた祖母の顔は急に若々しくなった。私は怪我をした蟻を掌にのせ、小さな生命のよろこびを感じた。
小説
執筆年月日/1940年(昭和15)
収録/『決定版三島由紀夫全集補巻』
あらすじ/東照宮の宮司をしている松平の伯父は年に一度、祖母を訪ねてくる。伯父は私の顔を見るなり、父親に似ていると泣き出す。祖母のお夏は涙もろい伯父をもてあましていた。祖母が珍しく、上野の伯父の家を訪ねた。昼どきだったので、私は精養軒から出前のオムレツを食べる。私は退屈しのぎに傾斜している廊下をすべり台にして遊んだり、若い神主に烏帽子をかぶせてもらったりした。伯父は東照宮時代に金遣いが荒い理由で、徳川家村山の別荘に隠遁(いんとん)した。その伯父を晩秋に訪ねた。伯父はそれから三ヶ月して亡くなった。
小説(原稿欠損)
執筆年月日/1942年(昭和17)
原稿枚数/400字詰原稿用紙15枚(タイトル1枚を含む)。以下、原稿欠損
収録/『決定版三島由紀夫全集20』
あらすじ/私はへやに帰ってくると、本箱の重い扉をあけ、我をわすれて時間を過ごした。私はよく夜汽車の汽笛がきこえる布団のなかで、本をよみふけった。夏になると、高原の家へ行ったが、本ばかり読んでいた。そんな頑固な私を大人たちは非難したが、私は本箱から本を運び、同じ模様の本を部屋に並べた。私はそれを「宮殿」と呼び、夢心地になった。先祖の墓参りのため、私は最初の長い旅行をした。汽車に乗ると、私は母が環のために買った本を手に取ってプレゼントした。
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